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工事が進む北海道スペースポートの新たな発射場=北海道大樹町、佐々木凌撮影

 雲のほとんど無い青空。まさに「十勝晴れ」だ。その下には、さえぎるものがない深青の水平線が広がっていた。

 昨年12月、北海道大樹町の「北海道スペースポート(HOSPO)」を訪ねた。帯広空港から車で40分ほど。日本で初めて宇宙に到達した民間ロケットが打ち上がった場所だ。今は新たな射場を建設中で、この日も打ち上げの際に出るガスを通す煙道の整備のために重機が忙しく行き来していた。

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現在建設中の新たな発射場「LC1」の完成イメージ=スペースコタン提供

 なぜこの地に「宇宙港」がつくられたのか。きっかけは、1984年にさかのぼる。国の宇宙港を新設しようという機運が高まり、北海道東北開発公庫(現日本政策投資銀行)が適地として挙げたことを機に、町が誘致に乗り出した。

 平坦(へいたん)で開けた土地が多い▽(打ち上げる方角の)東と南に海が広がる▽人口密集地が近くに無い▽航空機、船舶の航路が混雑していない▽晴天が多い、などが宇宙港に適している根拠となった。

 「これだけ条件がいい場所はほかにない。これからの街づくりには、夢の一つも必要だろうという、町長の思いもあった」。当時、町役場で宇宙政策を担当していた沼田宏則さん(78)はそう振り返る。

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北海道大樹町で宇宙事業を担当していた沼田宏則さん

 大樹町の主要産業は酪農だ。最盛期に1万1千人以上だった人口は、8千人ほどに減っていた。酪農以外の働き口が少なく、進学で町を離れた子どもが帰ってこない。新たな産業が必要だった。

 町は林野だった土地を買収し、スペースシャトルの着陸に使える滑走路の整備などを進めた。

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北海道スペースポート「HOSPO」の滑走路(全長1300メートル)=北海道大樹町、佐々木凌撮影

 結局、国の宇宙港はどこにも…

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